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「どうぞ」
 待ち合わせた場所で車に乗り込んできた高耶にいきなり花束を渡しても、またか、という顔をされただけですんだ。
 内心、つっかえされるかと思っていたのだが。
「貰いもん、とか言ったら怒るぞ」
「まさか。あそこの花屋で目についたので」
 直江が示した先には、小さな花屋がある。
「にしても毒々しいな」
 白い花びらの中央に、紫色の斑点模様が散らばっている。
「ええ、毒々しいですね」
 直江は楽しそうに答えた。
「なんだよ」
「いいえ」
 "虎百合"とつけられた札をみて、衝動的に買ってしまった。
 ユリという名を持つが、アヤメ科なんだそうだ。
 店員は丁寧に花言葉まで教えてくれた。

  誇らしく思う
  私を愛して

「なんて花なんだ?」
 問う高耶に、直江は意味ありげな視線を返す。
「どうしても知りたいですか?」
「……やっぱいい」
 あんまりいい予感がしない、と高耶は顔をしかめた。
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