本当に久しぶりに松本の自宅に帰ってみると、美弥がベランダへの戸を開けたまま、ぼーっと座っていた。
「ただいま」
「おにいちゃん」
暗示のお陰で美弥には久しぶりという感覚はない。痛ましく思って高耶も一緒になって隣に座り込んだ。
ふたりの視線の先には鮮やかな花を咲かせるプランターがある。
「松葉ぼたん……」
「そう、お母さんが送ってくれたの」
「おふくろが?」
「昔の家の庭にもあったんだって?美弥はぜんぜん覚えてないよ」
高耶は切なくなって、美弥の肩に手を回した。とても小さくて頼りない身体。
本当はずっと傍にいてやりたい。自分が護ってやらなければならないのに。
自然と抱く手に力が篭った。
「おにいちゃん」
「ん?」
「いいかげん、妹離れしないとね」
思いがけない言葉に高耶は目を丸くした。
「じゃないと美弥、いつまで経っても彼氏が出来ないよ」
「美弥……」
おどけた風を装ってはいるが、自分のことは心配いらないと言いたいらしい。
確かにもう高校生なのだ。誰かがこうやって美弥の肩を抱く日もそう遠くないことなのかもしれない。
……………。
冗談じゃない。
「美弥」
「ん?」
「彼氏はまだちょっと早いだろ」
「……おにいちゃんてば」
もう、と言いながら美弥は小さく笑った。
「ただいま」
「おにいちゃん」
暗示のお陰で美弥には久しぶりという感覚はない。痛ましく思って高耶も一緒になって隣に座り込んだ。
ふたりの視線の先には鮮やかな花を咲かせるプランターがある。
「松葉ぼたん……」
「そう、お母さんが送ってくれたの」
「おふくろが?」
「昔の家の庭にもあったんだって?美弥はぜんぜん覚えてないよ」
高耶は切なくなって、美弥の肩に手を回した。とても小さくて頼りない身体。
本当はずっと傍にいてやりたい。自分が護ってやらなければならないのに。
自然と抱く手に力が篭った。
「おにいちゃん」
「ん?」
「いいかげん、妹離れしないとね」
思いがけない言葉に高耶は目を丸くした。
「じゃないと美弥、いつまで経っても彼氏が出来ないよ」
「美弥……」
おどけた風を装ってはいるが、自分のことは心配いらないと言いたいらしい。
確かにもう高校生なのだ。誰かがこうやって美弥の肩を抱く日もそう遠くないことなのかもしれない。
……………。
冗談じゃない。
「美弥」
「ん?」
「彼氏はまだちょっと早いだろ」
「……おにいちゃんてば」
もう、と言いながら美弥は小さく笑った。
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