自分たちは、単なる生物。
そう、思い知らされた。
魂と身体は一体だ。
魂が求めれば、身体が反応する。
身体が感じれば、魂が震える。
死者である自分たちが、命の喜びを貪る日々。
いずれ……罰が下る。
いや、もう下っている。
自分の身体はおかしくなって、男の身体をむしばんでいる。
終わりにしよう、直江。
今度こそ。
オレもおまえも、何度終わりを望んだかわからない。
やっと、その時が来たのだ。
晴れない霧の漂う木々の合間で、高耶は振り返った。
果てしなく罪深い、ふたりだけの楽園。
そこに、終止符を打つ。
─────だからここへは、還らない。
そう、思い知らされた。
魂と身体は一体だ。
魂が求めれば、身体が反応する。
身体が感じれば、魂が震える。
死者である自分たちが、命の喜びを貪る日々。
いずれ……罰が下る。
いや、もう下っている。
自分の身体はおかしくなって、男の身体をむしばんでいる。
終わりにしよう、直江。
今度こそ。
オレもおまえも、何度終わりを望んだかわからない。
やっと、その時が来たのだ。
晴れない霧の漂う木々の合間で、高耶は振り返った。
果てしなく罪深い、ふたりだけの楽園。
そこに、終止符を打つ。
─────だからここへは、還らない。
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ふとした時に感じる、デジャヴのような感じ。
郷愁感。
これは母親の胎内を恋しく想う気持ちなのだと言ったのは、誰だっただろう。
おまえだったかもしれない。
息子が、亡き母を想うように。
旅人が、帰れぬ故郷を想うように。
陸の生物が、母なる海を想うように。
光が、生まれ出た星を顧みるように。
オレは、おまえを想う。
二度と戻ることのない場所。
─────だからこんなにも、懐かしい。
郷愁感。
これは母親の胎内を恋しく想う気持ちなのだと言ったのは、誰だっただろう。
おまえだったかもしれない。
息子が、亡き母を想うように。
旅人が、帰れぬ故郷を想うように。
陸の生物が、母なる海を想うように。
光が、生まれ出た星を顧みるように。
オレは、おまえを想う。
二度と戻ることのない場所。
─────だからこんなにも、懐かしい。
生命は、無数にある。
あの窓から見える大きな木、木の根元を覆う苔、その上を這う虫、その他目には見えない微生物たち。
捕食しあう生命、共生する生命。
他の生命と繋がりあった無数の生命は、それひとつで形を変えながら存在する大きな生命のようだ。
その中で、かろうじて個を保つ、仰木高耶という生命。
疲れ、荒み、諦め、いつ他の生命に埋もれてしまってもおかしくはないくせに、確かに存在するこの生命。
それを生かしているのは………おまえという生命。
捕食関係であり、共生関係でもある。魂ごと深く深く繋がって、もう互いに切り離すことの出来ない生命の繋がり。
それを一体、何と呼ぼう?
"名前など、なくていい"
廃屋の、この埃っぽい空気の中で、きっとおまえは言うだろう。
でもオレは、せめて名前だけでも決めておきたい。
もうすぐ、その繋がりを断ち切らなくてはいけないのだから。
愛なのだろうか。それとも感情を超えた、もっと別のものなのだろうか。
一つの言葉に絞るのは、とても難しいことだろう。一晩はかかるかもしれない。
………それでもいい。
名前のないこの繋がりにとって、今日は最期の夜。
─────だから今夜は、眠らない。
あの窓から見える大きな木、木の根元を覆う苔、その上を這う虫、その他目には見えない微生物たち。
捕食しあう生命、共生する生命。
他の生命と繋がりあった無数の生命は、それひとつで形を変えながら存在する大きな生命のようだ。
その中で、かろうじて個を保つ、仰木高耶という生命。
疲れ、荒み、諦め、いつ他の生命に埋もれてしまってもおかしくはないくせに、確かに存在するこの生命。
それを生かしているのは………おまえという生命。
捕食関係であり、共生関係でもある。魂ごと深く深く繋がって、もう互いに切り離すことの出来ない生命の繋がり。
それを一体、何と呼ぼう?
"名前など、なくていい"
廃屋の、この埃っぽい空気の中で、きっとおまえは言うだろう。
でもオレは、せめて名前だけでも決めておきたい。
もうすぐ、その繋がりを断ち切らなくてはいけないのだから。
愛なのだろうか。それとも感情を超えた、もっと別のものなのだろうか。
一つの言葉に絞るのは、とても難しいことだろう。一晩はかかるかもしれない。
………それでもいい。
名前のないこの繋がりにとって、今日は最期の夜。
─────だから今夜は、眠らない。