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───……っ」
 男の性急な侵入に、高耶は息を止めて声を押し殺した。
「……我慢できなくなったらちゃんと言って」
 高耶の性器を指先で弄びながら、わずかばかり息を乱した直江が言う。
「汚すわけにはいかないでしょう?」
 高耶の身体が乗せられた机の上には、作戦用の見取図が大きく広げられている。
 打ち合わせ中、唐突に催したふたりは、作戦本部の大机の上で荒々しく求め合っていた。
 尻の下で少し皺のよった地図を気にしながら、いいからはやく、と催促する。
「……おまえのほうが……もたないかもしれないだろ……っ」
「そんなこと、過去に一度もなかったでしょう」
「いちど……も?……ッ……ぜんぶ覚えて……のかよ」
「ええ、なにかも全部、覚えてる」
「……マジかよ……ッン……アアッ!」
 直江の身体にしがみつきながら、高耶にはそれが単なる戯言なのかそれとも本当のことなのか、判断がつかなかった。
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「いよいよですね」
 ここ数日はずっとこの作戦の準備にかかりきりだった。
 その成果が明日、やっとでる。
 高耶が自分を宿毛から呼び寄せてまで成功させたがった霊波塔奪還作戦だ。
 さぞや気合が入っているだろうと思いきや。
「やることは全てやった」
と、高耶はキャンプ用の長いすに座ってすっかりリラックスしてしまっている。
 隣に腰掛けたら、わざとらしく距離をとって座りなおされた。 
「腰痛で指揮取るつもりはないからな」
 今日は触れてはいけないということらしい。
 直江は高耶を追いかけるようにしてもう一度隣に座りなおすと、逃げられないように腰に手を回してしっかりと引き寄せた。
「身体の負担にならない方法、試してみます?」
 猫撫で声でそう言ってみたら、高耶の身体は逃げ出さなかった。

ヒトの身体には、いくつもの渦がある。
ひとつめは───


 指が近づいてきて、その先端にある渦が直江の頬に触れた。
 ゆっくりと唇へと移動する。
 かかる息は熱い。
 瞳は半分閉じられて、夢をみているようだ。
 次は唇が唇に触れた。
 腰にやっていた手を移動させた直江が、その指の渦で内股の熟れ具合を確かめると、かかる息が更に熱くなった。

ヒトの身体には、いくつもの渦がある。
ひとつめは指先に。
では、ふたつめは───


 頭を引き寄せると、渦のある髪に顔を埋める。
「嗅ぐなよ」
 犬じゃあるまいし、と高耶は嫌がる。
「太陽の匂いですね」
「汗くせえってことだろ」
「誘惑の香り」
 そう言うと、おまえにはな、と高耶は笑った。
「右巻きですね」
「つむじ?そうだっけ?おまえは?」
 髪を引っ張られて頭を下げると、
「左だな」
「もうひとつあるんですけどね」
「ああ………頑固者だから」
「あなたに言われたくないですね」
 直江が微笑で反論すると、
「おまえが頑固じゃなかったら、世界中の人間が素直を通り越して軟弱者だな」
と言われてしまった。

ヒトの身体には、いくつもの渦がある。
ひとつめは指先に。
ふたつめは頭に。
では、みっつめは───


「みっつめは?」
 耳に触れられてくすぐったそうな顔をする。
「耳ん中?」
「蝸牛もうずまき状ですが、それ以外で」
「……ヒント」
「ここと、ここと」
────ッ……」
「それから、ここと、ここ」
 その全てにある、オウギタカヤという名の二重螺旋。
「この中にも」
 気がつくと、高耶の身体がぴったりとくっついている。
「聞いてます?」
「……どうでもいい」
 あからさまな催促の手管に、直江自身もDNAの話なんてどうでもよくなってしまった。
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