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『 37.懐かしい 』≪≪  
   
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 生命は、無数にある。
 あの窓から見える大きな木、木の根元を覆う苔、その上を這う虫、その他目には見えない微生物たち。
 捕食しあう生命、共生する生命。
 他の生命と繋がりあった無数の生命は、それひとつで形を変えながら存在する大きな生命のようだ。
 その中で、かろうじて個を保つ、仰木高耶という生命。
 疲れ、荒み、諦め、いつ他の生命に埋もれてしまってもおかしくはないくせに、確かに存在するこの生命。
 それを生かしているのは………おまえという生命。
 捕食関係であり、共生関係でもある。魂ごと深く深く繋がって、もう互いに切り離すことの出来ない生命の繋がり。
 それを一体、何と呼ぼう?
 "名前など、なくていい"
 廃屋の、この埃っぽい空気の中で、きっとおまえは言うだろう。
 でもオレは、せめて名前だけでも決めておきたい。
 もうすぐ、その繋がりを断ち切らなくてはいけないのだから。
 愛なのだろうか。それとも感情を超えた、もっと別のものなのだろうか。
 一つの言葉に絞るのは、とても難しいことだろう。一晩はかかるかもしれない。
 ………それでもいい。
 名前のないこの繋がりにとって、今日は最期の夜。

─────だから今夜は、眠らない。
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