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『 32.亡命者 』≪≪    ≫≫『 34.反逆者 』
   
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 信長のやり方が憎かった。
 力があるのをいいことに、弱者を力でねじ伏せ、面白半分に痛めつける。
 正しく在ろうなどとは考えもしない、まるで力そのものが正義かのような振る舞いは、決して許すことなど出来ない。
 そしてそれは、何も信長に限ったことではなかった。
 ひとりの人間の誤った判断が、巡り巡ってとてつもない惨劇を引き起こす様を、自分は幾度も目撃してきた。
 大抵、そういう人間は大義名分を振りかざす。
 信念に基づいて引き起こされたはずの行動が、人々の生活を破壊し、当たり前にあるはずの幸福を破壊し、期待に満ちていた未来までをも破壊してしまうことが、何度あっただろう。

───その逆もまたあったはず。

 確かに、そうかもしれない。
 ひとりの人間が起こす奇跡も数多くあった。
 しかし歴史は繰り返す。
 また必ず現れるはずなのだ。
 "為正の破壊者"。
 それが、自分でないと何故言える?
 きっと今の自分は、誰の賛同も得られない。
 この世界の道理が、自分の意図にそぐわないから破壊する。
 これでは信長と何も変わらないじゃないか。

───何のために破壊するのかを考えて。

 何のために?
 ……それは、無力でただ涙を流すことしか出来ない者たちのために。
 彼らに、力あるものに負けない"チカラ"を与えるために。

───あなたのチカラはそのためのチカラ。

 ………その通り。
 そうなんだ。
 自分の力はその為にこそあったはず。
 だから、罪悪感など感じてはいられない。
 この瞬間にも、救われない魂が悲鳴をあげながら生まれている。
 迷っている暇なんかない。
 罪を、未来を、恐れる自分の弱い心を。
 いま、破壊する。
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